昭和55年、受験生の私は、猛烈にモーリスのギターが欲しかった。以前、買ってもらった1万円のギターはすぐに弦の所が剥がれて使い物にならなくなったから、今度は5万円のモーリス希望。安物はすぐ壊れるって説得するけど、母は中3の趣味のためにそんな高価なギターは…って感じ。父は自分が仕事から帰ってきた時、笑顔で「お帰り」と言ったら100円あげるから、それを貯めて買えば良いと提案した。それから思春期真っ盛りの私は、父が帰ってきたらシッポを振ってお帰りと言い続けた。100回ぐらいは言っただろうか。父は根負けしてギターを買ってくれた。高校生になって、自分でエレキギターを買ったけど、嫁入り道具に入れたのはモーリスのギターだけ。息子が小学生の時、弾いてみたいと言ったので触らせたら弦が錆びてて一瞬で切れた。それから誰も触らないまま月日が流れ、ハードケースに入ったそれは置き場を失くし、最後は楽器屋で買い取ってもらった。25年ぐらい一緒にいた思い出のギター。今更ながら父に感謝。
と思っていたら、友達は中学生の娘に30万のトロンボーンを買っていたと聞いた。ちゃんと「お帰り」言わせたんか？
