「明日休みだから仕事帰りに実家にサプライズで泊まりに行こ~」40歳ぐらいから、たまにそんな事をやっていたけど、母は75歳を過ぎたあたりから「びっくりするから いきなり来んといて!」と言うようになった。娘にその事を愚痴ったら「お婆ちゃんは海で遊んだ次の日ぐらいしんどいんやな」って。確かに海の次の日は【ダルオモ】だ。母は年老いて毎日がダルオモになってしまっていた。
あれから15年、ダルオモは益々勢力を上げている。最近は、外では杖をついて、家では壁を伝って歩いているけど、その音が「ズズズ…ズズズ…」とホラーな音を醸しだして、夜中に初めて聞いた時、マジで幽霊かと思った。物忘れもひどくなり、同じ話を2億回聞かされ、泣きそうになった時、ふと昭和53年のチューリップの歌「夕陽を追いかけて」が脳裏に流れた。
いつからだろう~父は小言の~たった一つも~やめてしまっていた~
いつからだろう~母が唇に~さす紅を~やめてしまったのは~
長生きしてねの~ひと言さえも~照れくさず言えず~明日は出てゆく日~
ちなみにデイサービスの日、母はしっかり口紅を塗って行くけど、ついこの間まで一緒に出掛けていた母の老い方は、ただただ切ない。