あれは平成5年ぐらいだろうか。幼稚園の息子と車で出かけ帰ってきた時、マンション裏の階段に知らない子供2人とお母さんらしき人が立っていた。急に雨が降ってきたから雨宿りか。その家族に会釈して階段を上がって家に入ったけど、なんか気になる。ウチにはちょうど捨てていいようなボロいビニール傘がたくさんあったから、息子に「古い傘だから使ってください、返さなくていいです」と言って渡してくるように3本持たせたら「ありがとうって言ってた」って。ボロい傘でも役に立ったことが嬉しかった。
そんな事をすっかり忘れたある夜、私がママさんバレーから帰ってきたら、ディズニーランドのお菓子が置いてある。「うわっ、誰のお土産？」と喜んで開けようとしたら息子が「傘の人」って。しかもボロ傘まで戻ってきてる。あの人はきっと傘を受け取った後、息子を尾行し部屋番号を調べたんだ。大人が行ったら恩着せがましい気がしたから息子に行かせたのに、これなら自分が行って巻いて帰ればよかった。お礼のお礼を言いたくても名前も知らないし顔も覚えてない。律儀なお母さん、あの時はどうもありがとうございました。
