平成6年、ラルク・アン・シェルがブレイクした。当時はCDを焼くなどというシステムはなく、CDをレンタルしてカセットに録音して聴く。貧乏な私は、更にそのカセットを友達に借りて録音しようとした。そのためにはダブルラジカセが必要だ。カセットは聴きすぎると伸びてしまうので、今すぐ録音して自分ので聴きたい。夕方、立派なステレオを持っているママ友Mさんの家に行き、難しい説明書を見ながら2人で何度も試み録音がスタートした。私は今日持って帰りたいと更なるわがままを言い、Mさんは晩ご飯を作りながら居座る私に付き合ってくれた。ロック好きでもないのに。録音がそろそろ終わるかなという時、私は「ちゃんと動いているか?」とデッキに顔を近づけた。テープの動きをこの目で確かめるために近づきすぎ、おでこでスイッチを消した。ガチャンというまぬけな音を聞いて、ふだん爆笑とかしない大人しい彼女は涙を流して笑った。今、思い出せば「さすがにもう帰ってくれ」と泣いていたのかもしれない。