昭和55年、中3の時に一瞬だけ同級生の男子と付き合った。と言っても昭和の中学生、チューどころか手もつないでない。授業が終わると一緒に帰り、彼の家で1時間ぐらい喋るだけ。その家は13部屋もある大きなお屋敷で、1軒屋に住んだことのない私には城にしか見えなかった。両親はいつも不在で、代わりにお婆ちゃんがジュースを運んでくれる。ある日、祇園祭に誘われたけど、思ってたのと全然違って彼が鉾に乗ってコンコンチキチンをすると言う。15歳の私は、金持ちの先祖代々の行事が理解できないまま、お婆ちゃんと彼の妹と3人で行く事になった。出掛ける前「御不浄は行かなくて大丈夫ですか?」と、お婆ちゃんが聞いてきた。「はぁっ?」「ゴ、ゴ、ゴフ?」何回も何回も聞きなおした。イラっとしたお婆ちゃんは「御不浄!おトイレ!」そこからは、自分がアホみたいに思えてきて、彼が何を奏でていたのか全く覚えてない。身分の違いからか、私たちは夏休みの間に自然消滅した。彼の顔も思い出せないけど「御不浄」という高貴な言葉だけは忘れられない。