平成25年、娘の結婚が決まった。両家の顔合わせは、堅苦しいのはやめて平服で軽い食事会にしましょうと提案してくれたご両親は、ウチの近所の「かごの屋」まで来てくれる事になった。ウチは母子家庭で心細いから息子を連れて行くと言ったら、彼の弟も一緒に来てくれる事になった。息子の作り笑顔は殺人鬼みたいで印象が悪いからと、当日何度も自然な笑顔の練習をさせていたら、娘から「もう着いてるから早く来て」と連絡がきた。[早っ!」慌てて行く途中で、私は手土産のために前日並んで買った「かりんとう饅頭」を忘れた事に気付いた。息子に、私が遅れるのはアカンし取ってきてと頼んだ。緊張の中、初めて会ったご家族との挨拶が終わると、お義母さんが各席に紅白饅頭を置きだした。「それ、マジのやつやん!ざっくばらんと違うやん!」息子が来た時、私は「ありがとう」ではなく「しっ!黙れ」と言って、すぐそれを隠した。誰もスーツも着ていないし、和やかな食事会。だけど頭では「かりんとう饅頭」なんかを渡しても良いのか悪いのか、その事ばかり考えていた。ざっくばらんって難しい。