昭和58年、受験が終わったので、友達N恵と冬休み限定でそば屋のアルバイトをした。年末は「みそかそば」という年越しそばを、昼ご飯に食べるサラリーマンが多く、とても忙しかった。狭い店なのに学生バイトが4~5人、汁に指を突っ込みながらあくせく働いた。その店の【まかない】は本当に美味しかったな。私とN恵は7時までだったので、その店の穏やかな「旦那さん」が
「ささ、ど~ぞ~」
と言ったら上がれる。次第になれてきた私たちは、時間になると「んっささ、んっさっ!んっささ、んっさっ♬どうぞどうぞどうぞどうぞ~♬んっささ、んっさっ!」と、言ってもらえるまで小さく歌い続けていた。なかなか言ってもらえない時もあったので、多分あの歌は旦那さんに全部筒抜けだったんだろうと思う。今はもうない老舗のそば屋。