平成17年頃、私はS子と飲みに行っていた。彼女は私の友達の中で最も愉快な人物。寒い日に自転車でバイト先に着いた時「あれ？マフラーしてたっけ？」とよく見たら首に雪が積もっていたなどバカみたいなことを話すヤツだ。普段「酒のアテ」なんて食べ物以外考えられなかったけれど、その日の話は最強だった。 S子が自転車でバイトに行こうと坂を下っていたら途中でブレーキが効かなくなったらしい。S子は短い時間で
「このまま国道に出て、ひかれる」か、「電柱に激突する」か考えたと言う。私も坂でブレーキがブチ切れた事があるけど、靴がすり減って火を噴いてでも足で踏ん張ろうと思ったのに、S子の考えはどちらも死の選択だった。そして、電柱を選んだらしい。自転車はぶっ壊れ、自分も吹っ飛んだらしいのに、彼女は家族に車で来てもらって、そのままバイトに行ったと言う。そのクソ根性に笑い転げ、私はもう1回、最初からその話をしてほしいと、おかわりを頼んだ。S子の話はネタではなく、S子の生活そのものだ。あの女こそ、ナチュラルキラー細胞だと私は思う。
